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【挑戦の先にある未来】ヤマダイ食品がフルーツ事業を始めた理由

実は、私たちヤマダイ食品がフルーツに挑戦した理由はとてもシンプルです。なにより、代表の樋口が“フルーツ好き”だったから。

 

きっかけは愛読書である統計本

 

フルーツ好きの樋口が、事業として本格的に取り扱うきっかけになったのは、なんと「統計本」。……そもそも統計を愛読するという時点で、ちょっと理解が追いつきません。愛読している業界統計書には、惣菜や生鮮野菜、冷凍食品のデータがずらり。ある年、そこに突然「フルーツ」の統計が現れました。

――量が増えている、つまりマーケットが拡大している証拠。

「じゃあ、うちもやろう」

と、フルーツ好きがフルーツ事業を始めたきっかけ。というよりも、特にマンゴーに目が無いフルーツ好きが、“統計という大義名分”を見つけて、ようやく堂々と事業として始められる口実を得た――そんな言い方のほうが合っているかもしれません!(笑)

 

最初の挑戦

 

2016年頃、まず取り扱ったのはマンゴーでした。統計を見て、一番魅力的なマーケットだったからだそうです。(笑)世界中の展示会を巡るなかで、既に日本と取引のある会社ではなく、ヨーロッパやアメリカ向けに輸出している東南アジアの会社に声をかけます。

「輸出したことある?」
「ないけど、多分できる」
「じゃあやろう!」

この行動力で取引がスタート。さらに、樋口が昔から抱いていた疑問。「東南アジアで食べるマンゴーはあんなに美味しいのに、なぜ日本ではいまいちなのか?」

答えは“熟度”でした。日本に流通するマンゴーは、輸送に耐えるために未熟な状態で収穫されることが多いのです。そこで、あえて完熟マンゴーを使用。
「崩れていいから、甘くて熟した状態のマンゴーで、美味しいマンゴースムージーが飲みたい!」
樋口のこんな願望から、ヤマダイ食品の挑戦が始まりました。

他社のマンゴーと比べると形はやや崩れます。でも、それは“完熟している証”。加糖が必要ないくらい甘いマンゴー、間違いなく美味しいです。

 

目利き力

 

樋口は世界中の展示会に出向き、おいしいフルーツを探します。

「商談が1時間あれば1kgは食べる」もはや試食の域を超えるほどの量を毎回の海外出張で食べます。それほど好きだから、誰よりも味を知っているのです。

「フルーツは目利きです。理屈じゃなくて“おいしいかどうか”。」この目利き力は、国内最高峰のフルーツ店のS疋屋のおじさんと話す中で鍛えてもらいました。しかもなんとそのやりとりを始めたのは25~26歳の頃から。店頭で「今日食べたいんですけど」と言うと、ものを見て「今日はないな」と1個2,500円もする桃を売ってくれなかったそうです。「これは今日いけるんじゃないですか」と聞くと、「これは明後日だな」と言われることもあったそう。これが本物なのだと思います。こうして鍛えてもらった結果、フルーツと話して、食べごろが分かるようになったそうです。(ちなみに、焼肉を焼くときも、樋口は肉と対話をしています。)

 

売れるかどうかより、まず試す

 

ヤマダイ食品では新しい商品を仕入れるとき、最初から売ろうとはしません。

「1年かけて本当に付き合えるかも含めて、見極める」

ダメだったら、また一から探します。ビジネスのスタンスは、「美味しいものを安定的に世の中に増やしていこう」という考えが軸。だからこのようなアプローチになってきます。結果、マンゴーを探しに行ったのにたまたま美味しいドラゴンフルーツに出会い、今では業界の中心プレイヤーに。偶然の出会いも、挑戦をやめないからこそ起こります。

 

こだわりは“最高の一皿”ではなく“最適解”

 

樋口の口癖は「大体でいいんだよ」。

「え?もっとこだわってください!」と思わず言いたくなりますが、これは妥協ではなく、究極のこだわりの結果。実はこの言葉、弊社の顧問であるフレンチの巨匠がおっしゃっていたそう。ある日、樋口と某巨匠が一緒に食事をした際、レストランのシェフが「最高の食材を使って〜」と熱く語ったその直後、二人が口をそろえて言ったのが、「それは無理でしょ。」でした。最高の食材をいつも出すのは無理だから「大体でいいんだよ」。

樋口が言うには――

「フルーツだって、本当に最高のものはその時その場に一つしかない。だから全員に最高のものを提供するのは無理なんです。」

ここでワインの話をすると、ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)氏の発想にまさに通じます。ドン・ペリニヨン氏は、単一の最高なぶどうだけを追い求めるのではなく、複数の区画や品種を「組み合わせて」ブレンドすることによって、より安定的で豊かな味わいを生み出す発想を広めた人物として知られます。つまり、最上の一要素に固執するより、複数を掛け合わせてより高い完成度をつくるという考え方です。(詳しくは『世界一優雅なワイン選び』のシャンパンのページをぜひ読んでみてください)樋口はこの考えを敬愛していて、若者が「ドンペリ」と呼ぶたびに、昔は実際に声に出して「ドン・ペリニヨンさん、だろ!」と突っ込んでいたほど(笑)。今では実際に声に出す事はなくなったものの、その発想に深い敬意を払って心の中で静かに突っ込んでいます。

実際、たとえばマンゴーのなかの“最高の一個”は年に一度それか10年に一度のたった1個かもしれない。しかも1個のマンゴーでも一番おいしい部分は一口分くらいしかない。ならば私たちは「毎日の食卓がうれしくなる」ことを目指し、誰もが手に取りやすい“ちょうどいい最高”を探す。それがヤマダイ食品の選択です。

“最高の一点”を追うより、“最適な組み合わせ”で新しいおいしさをつくる。ヤマダイ食品の商品づくりも、まさにそこを目指しています。

 

終わりに

 

今回の取材で編集部が強く感じたのは、樋口がただのフルーツ好き、肉好きという枠を超えていること。端的に言えば、“食の変態”です(褒め言葉)。その実例をひとつ。樋口は焼肉屋に行くと、“肉焼きおじさん”と化し、まずお肉に向かって(本気で)『どうやって焼いてほしいの?』『ああ今日はそういうコンディションね』と話かけ、その時々のコンディションを見極めて、最大のパフォーマンスを引き出すのです。心の中ではなく、本当に声に出して会話しているというので、驚きです。

さらに焼肉の銘店で、1枚2,000円もするハラミが人数分テーブルに出た際は、「好きな1枚を選んでいいよ」と言いつつ、後で「正解」を教えてくれるそうです。そもそも、「好きな一枚って何!?」という話ですが(汗)、もちろん樋口は、自分が食べたい“その中の最高の一枚”をきっちりキープしているのです。。。

そして、食べる人に「どこでピークが欲しいか」を聞く。「どこで一番おいしく感じたい?」「今、あと何枚くらい食べられそう?」と確認しながら、その人の満腹度に合わせて焼く順番を組み立てていくのです。つまり、“全員が美味しく食べられる順番”を、肉の状態と人の状態の両方から逆算して決めています。

フルーツも肉も、どちらも変態級に愛している樋口だからこそ生まれる、ヤマダイ食品ならではの事業への姿勢と色。

次回はついに「焼肉編」!?
その変態っぷり、編集部が全力で暴いていきたいと思います!