会社経営を長くしていると、全く順風満帆な経営者はこの世にほとんどいないのだろうと気がつきます。事業経営は大なり小なり山あり谷ありな代物。うまくいっている時は、誰が何をしていてもうまくいくモノですが、一度歯車が狂ってしまうと全てが悪循環に陥り、どうにもならない状況に追い込まれることがあります。経営者の真価はそんな時に決まるのではないか、といつからか考えるようになりました。
そして何度か「全てを失うかも」という危機に直面した経験のある私が至った結論は、健康と安全であれば大方良しという考えです。その考えに至る上でこの本の影響は大きくあったと思います。
『自分を生かす人生』の著者、本多静六氏は、明治のころ、蓄財の神様として名を馳せた方なのだそうです。この方の教えはとてもシンプルで「収入の四分の一を貯めなさい」というものです。これを実践すると、三年後に一年間収入がなくても生活できる貯蓄ができます。そうすることで心の余裕ができ、「お金のことを気にせず生きること」「お金のために働くのではなく、働くこと自体が道楽になればそれが一番幸せなのでは?」と私たちに提案しています。「健全な精神は健全な身体に宿る。その逆も然り」と言うように、精神も大事だが、それと同じくらい身体も健康であるべき、と現実主義的な主張もあります。また「本来、迷いは無知から生じ、疑いは知識の裁断を必要とする」「労働は健康を生み、健康は幸福を生む」など、歴史上の偉人の言葉の引用も多くあり、「幸せな人生とは」という我々が普段見失いがちな人生の根本的な考え方も明示してくれています。
提供:久喜市教育委員会
特に「生活は常に上り坂であることが大事」と言う教えは、私も若者たちに常に伝えていますし、私が従業員の月給を毎年上げ続けている理由もここにあります。また名家やお金持ちの子弟が幸福になるにはどうすればいいか、についても示唆に富む提案があります。
そして「最高の満足は努力そのものの中にある。他人のために働かず、自分のためにばかり働く人は、自分の一身が死ぬ時には、その働きが消滅するが、他人のため社会のために働くことは、その働く範囲も効果も無限であるから、ひいては無限の大生命・不朽の霊的生活を実現するものである」「金銭や知恵や権力や建国はいずれも幸福になる材料に相違ないから、理性の許す限り相当に持つがよい。しかもこれらは決して幸福そのものではない。真の幸福は、これらの材料を用いて、身のため世のためになるよう無理のない筋道の通った働きを楽しむことである。すなわち正しい仕事をするのを楽しむのが幸福である」と喝破しています。
私の幸福論のベースになっているこの本、長く幸せになることをお望みの方にはお勧めかもしれません。