BEVERAGE

燃えやすいスピリッツ。

私たちヤマダイ食品には、毎年一定数の新卒採用者がやってきます。社内は一時、期待と希望が織り混ざったような状態になり、春の訪れと新しい会社の未来を感じています。会社の組織は極めてシンプルで、役員以下はリーダーごとのチームとなっており、リーダーが担当役員とのやりとりを行いながら、様々な企画、実行を遂行しています。そういう意味で言えば、長大な組織とは異なり、意思決定に近く、トップダウンもボトムアップも流動的に実行できる体制にあると言ってもいいでしょう。もちろん、最終意思決定者である社長を突破するのはいつでも簡単ではないのですが、それはつまるところ、ヤマダイ食品の品質基準そのもののレベルの高さと、味の良さに直結していきます。

さて、このチーム運営においては、日々人材育成あるのみですが、これはどの企業にとっても永遠の課題です。人はそもそも多様であり、ひとつのケーススタディですべての人間が変わるわけでは無いからです。お酒のスピリッツといえば、アルコール度数が高く燃えやすい酒の一種ですが、人のスピリッツ(こころ)はなかなか複雑です。

チーム運営する際に、どうしてもスキルを磨くことに集中しがちなのですが、そもそもそのスキルの目的を因数分解していかなければ、本質的な部分に火がつかないことが多々あります。たとえば、とある店舗にヤマダイ食品の食品を提案するとします。スキル的にいえば、その食品の知識を身につけ、相手にとってどのようにメリットがあるのか、コスト的なものを提案し、既存商品との比較などを行うのが定石と言えるでしょう。ここでスキルとなるとプレゼンテーション資料の見栄えや、相手にわかりやすく情報が届くようにするための手法ということになるかもしれません。

しかし、本質的な提案は少々異なります。たとえば、なぜお店は”新しい味”を常に探しているのか。訪れるお客様の満足度についてどう考えているのか。経営的な悩みにはどのようなものがあるのか。社会状況はどうなのか。こうしたひとつひとつに、クライアントの”目的”が隠れています。しかし、プレゼンテーションのスキルだけではこうした部分に到達するのは難しい。それよりも、提案者自身が、新しい味を求める時にどのように考えるのか、食材を購入する際にどんな部分を見るのかを磨くことの方が重要でしょう。つまるところ、提案する人間そのもののスピリッツがお客様自身に対して熱い提案の思いを持っているか否かのほうが、見栄えが悪いプレゼンテーションだったとしても、相手のスピリッツに火をつける可能性があるということを意味します。

人の心に火をつけるのはとても難しいことです。しかし、自ら燃えていてすぐに動きたいと考える人もいます。人に火を分け与えられたら燃えることのできる人たちもいるでしょう。中には、どんどん人に火を分け与えることができる人たちもいるかもしれません。私たちは、そういう部分を見極めながら、新しい採用者に必要な気づきや提案力を磨き上げることに注力しながら、企業としての展望を開いていきたいと考えています。