樋口が“東京の母”と慕う、成澤氏——保険営業のプロフェッショナルとして数々の経営者と関わりながら、日本文化にも、人の心の機微にも深く通じています。彼女の言葉や振る舞いのひとつひとつからは、豊かな教養と人生の哲学がにじみます。出会いのきっかけは一つの直球の質問から。そこから始まった関係は、やがて「相談したい」と思える、人生の要所要所で頼れる存在へと変わっていきました。
今回の記事では、そんな成澤氏なりの哲学と文化への探求心、そしてそれを受け取った樋口の視点を通して、仕事の姿勢や、日本文化を味わうヒントをお届けします。少しだけ立ち止まって、自分の「食べる」「働く」「生きる」を見つめ直してみたくなる。そんなお話です。
日本を味わう。
樋口が成澤氏と接するなかで強く感じるのが、“文化度の高さ”です。たとえば、ちょっとしたお菓子のやりとりにも、季節の風情を忘れません。季節に合った和菓子に、手書きの詩を添える。文芸評論家の小林秀雄さんが大好きな樋口にとって、つい批評したくなるほどの文化度の高さなのだそうです。このちょっとしたやりとりが、文化的でとても楽しいのだそうです。
世界中に「おいしい笑顔」を届けることを目指すマダイ食品にとって、こうした日本の文化を“知っていて、語れるか”は非常に重要な要素です。海外の現場では「日本のこと」を聞かれる機会が圧倒的に多く、「世界のこと」はほぼ問われないという現実があります。例えば神社とお寺の違いや、5月5日は端午の節句、9月9日は重陽の節句——なぜその日なのか、なぜその食べ物なのか。“いつ、何を、どうして食べるのか”。そこに意味を持たせなければ、文化は伝わりません。(ヤマダイ食品ECサイトujuroでも行事食を紹介中!)こう考える樋口は成澤氏によく日本の文化について質問をすることがありますが、1つ質問をすれば100倍になって返ってきます。時には成澤氏自身が手書きで文化をまとめた約100ページにもわたる冊子をもらったこともありました。そのすべてが、深く、的確で、実生活に根ざしているのです。
その文化度の高さはどこから来たのか。「小さい頃から日本の伝統的なものが好きで、気になったらすぐ調べて、すぐメモして、すぐ試してたの。」と成澤氏は笑います。たとえば織物や日本画に心を惹かれれば、とにかく自分でやってみる。なんでも熱中してやっていたといいます。この“探求心と即行動”の積み重ねが、誰にも真似できない文化度の高さを生み出しているのでしょう。
「ただ、処理すればいいだけ。」
樋口にとって、成澤氏から教わった数々の教えの中で、今なお最も仕事に活かされていると感じているのが、この言葉です。若かりし頃の樋口は、何かあると感情的になり心をすり減らしてしまう、喜怒哀楽の強い人間でした。そんな樋口が、2008年に会社が一度倒産直前になったとき、相談したのが成澤氏でした。
「樋口さん、大変だって思うこともあるでしょう。でもね、それ、気のせいなのよ。」成澤氏にさらりと言われたその一言に、樋口は衝撃を受けたといいます。「どんなに大変なことが起きても、感情に左右されて心を削ってしまうのは無意味。ただ“処理”すればいいだけのこと」——成澤氏のその考えに触れた瞬間から、樋口の心は変わり始めました。以降、どんなトラブルが起きても揺れない心、冷静に対応できる胆力が自然と備わっていったと語ります。成澤氏は「私は能天気だから」と笑って話しますが、これは単なる楽天的な考えではありません。たとえば彼女が15歳の娘を単身オーストラリアの高校へ送り出す際、こう伝えたそうです。「今まで一生懸命育ててきたんだから、あなたが真剣に考えるのは“生きるか死ぬか”のときでいいの。他は、自分の感性を信じて、自分で決めなさい。」ここにも、「処理する」という成澤氏の哲学が貫かれています。感情に飲まれない。余計な不安で身動きを止めない。大切な判断に集中し、あとは自分の感覚を信じて行動する。この潔さこそ、現代を生き抜くためのシンプルで強い知恵ではないでしょうか。

VIPほど、実はアナログ?
そして最後に、樋口が最近ひしひしと実感していること。それは、「本当に豊かな人ほど、驚くほどアナログである」ということです。「便利さ」や「効率」を追い求める層がいる一方で、彼らよりもはるかに上の層——つまりほんの一握りの不世出の成功者ご本人は、手間暇を惜しまず、むしろ非効率な方法を選びます。あるとき樋口が、そうした不世出の成功者のお一人に「なぜパソコンを使わないのか」と聞いたことがありました。すると、返ってきたのはこんな言葉。
「みんなね、私に便利だからパソコンを勧めてくるんよ。でもね、勧めてくれる人の中で私より成功してお金を持っている人がいないのよね。」
この言葉に、樋口は衝撃を受け、自分もパソコンを使うのをやめたそうです。(実際に樋口にメールを送っても、2、3か月後に返ってきます…被害報告多数(笑))合理性よりも大切なものが他にあると気づかされる出来事です。では、なぜアナログなのか?成澤氏の見解は明快です。「結局は“生き方”の違いなのよ。人と会って、話して、ご縁をちゃんと大事にしてるかどうか。それだけ。」便利な道具に頼るのではなく、人との関係性のなかにこそ価値がある。タイパ、コスパを追い求めた先に何が待っているのでしょうか?便利さに慣れた今だからこそ、成澤氏の言葉は、何を大切に生きていくかを静かに教えてくれているようです。
あとがき
今回の対談、実は2時間を超える長時間にわたって行われました。対談の中では、「そんなことまで話していいの!?」と思わず驚いてしまうようなエピソードが数多く飛び出しました。しかしながら、そのまま掲載すると各方面に甚大な影響が出てしまう可能性があるため(大汗)、泣く泣く大幅なカットを施すこととなりました。お伝えできないのが本当に悔やまれます……。そのうち「ピー(放送禁止)」を多用した動画を、こっそりと“裏対談編”として公開しようと画策しております。
ちなみにこの対談、実現のきっかけとなったのは、「30年後の息子にメッセージをもらえませんか?」という、樋口の少しズルい口説き文句。対談の最後に成澤様は、未来の子息への手紙を託してくださいました。その内容に、編集部では思わず涙する者も──。
この手紙は、樋口の子息が中年になる30年後あたりに、改めて公開させていただく予定です。どうか成澤様には、それまでますますお元気でいていただければと思います。
成澤様、このたびは貴重なお時間と素晴らしいお話を、誠にありがとうございました。
対談動画を、ヤマダイ食品公式YouTubeチャンネルにて公開を予定しております!ぜひお楽しみに!