食べるの未来

アメリカの「OMAKASE」。

アメリカではいま「OMAKASE」スタイルの日本食レストラン店が多数あります。これ、実はアメリカだけではなく、東南アジアなんかでも広がっているという情報もあります。特に欧米では、カウンターに座ってオーナーシェフ(日本で言えば大将)と直接やりとりしながら食事するようなお店の作りになっていないところが多く、フロアスタッフに「おすすめ」を聞くことはあっても、お店に要望を伝えて「おまかせ」するという文化はあまりないと思われます。ワインのテイスティングもそうですが、お店からのプレゼンがあってお客の承認を得られて初めてメニューが提供される流れです。

とはいえ、日本で生活する我々が「おまかせ」を使うシーンなんて実のところほとんどありませんよね。特に親しい料理人がいたり、よく通うお店だったりがあれば、入ってすぐ「おまかせ」でということがあるかもしれません。しかし、そもそも「おまかせ」は値段を見ないで頼む行為ですから、それなりの金銭を保持している時じゃないと使えない技でもあります。

さらに”その店にどんなものが今入っているのか”というのは、私たちにはわかりません。その店に入っているものというのは、料理人からすれば旬で今おいしいものだったり、念願かなって手に入ったものだったり、自分が特に得意としているものだったりなど、いろいろな思い入れがあるものです。それを使った料理を食べるということは、お店を体験する上でも上質な体験価値になるので楽しむことができるというメリットがあるでしょう。

と、まあ、いろいろ書いていくとこの「おまかせ」という一言には、お店に対する我々の信頼の表れだったり、懐にある程度余裕があることだったり、または、初めてのお店だからいろいろ知ってみたい、というような様々な要素がたくさん重なっていないとできない意思表示であり、お店からしても同様にそれを言ってくるお客様は、親しい人であればまだしも、初めて来た人の場合は試されているのかもしれないと考えるような、気のおけないオーダーであることがわかります。「OMAKASE」を楽しむようになってきた海外の人たちは、この感覚を楽しんでいるということになるのではないでしょうか。

もちろん「おまかせ」をいうことがゴールでもなんでもないのですが、その料理屋さんを理解したり、楽しみたいと思えるようなお店に出会ったら、足繁く通いながら関係を深め、どこかでこの一言を使ってみたいと考えるのもまた実に楽しいものだといえます。”食べる”だけではない楽しみに方にもまた、深い文化の一雫があるのですね。