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樋口智一の一冊

『タオ』 -樋口智一の一冊-

人間が成長するには三つの方法がある、私は若い頃そう教えられました。一つ目の「旅をする」ことは、私たちに「世界は広い」という普段つい忘れがちな、そしてごく当たり前のことを教えてくれます。次に「人と会う」こと。この社会は人の集合体です。そして社会には様々な人がいます。自分以外の誰かを知ることで、新しい考え方や価値観と触れることでも人は成長できます。そして三つ目が「本を読む」ことです。本を読むことで、私たちは時空を超えて様々な人の言葉や考えと触れ合うことができます。特に歴史上の偉人の言葉に触れることは、私にとっては成長であるとともに、何よりも楽しい時間の過ごし方の一つでもあります。

ただし、歴史的な書物は、古ければ古いほど、言語が異なればそれだけ、理解することは難しくなります。言葉の通じない土地に行った際に通訳をしてくれる人が必要なように、歴史書にも良い翻訳者がいるととても助かります。「シェイクスピアは坪内逍遥に限る!」とはよく言われていますが、老子はこの著書がいいと思います。私は元々老子は好きだったのですが、この著書のおかげで2000年以上前の中国春秋時代に活躍した哲学者についての解釈がより深まりました。それが今回ご紹介する『タオ』です。先輩からの紹介のこの一冊。読んでみて驚いたのが、全てが詩だったことです。その詩はとても読みやすく、でも老子の本質をしっかり捉えたものばかりで、すぐ私の愛読書の一冊に仲間入りし、二十年が経ちました。

著者があとがきで、「初めにお願いしておきたいことがある。この『あとがき』を読む前に、まず本書全八十一章を読んでほしい」「他の人からの先入観や予備知識なしに、いまのあなたのままで「老子」の言葉に接し、自分の中に共感するものがあるかどうか、験してほしいから」とあるので、この本の内容については書かないことにしました。私のお気に入りは、「最上の指導者」の章とだけ書かせていただきます。

私が若いリーダーの皆様との会話の中でよくお話しする「人びとに侮られるリーダー」は第四等(四流)、「恐れられるリーダー」は第三等(三流)、「人びとに親しみ、褒めたたえられ、愛されるリーダー」第二等(二流)、では第一等(一流)のリーダーとは?の答えがここにあります。私はそれを目指しています。

普段から「なんでもいいよ」という真意もここから来ています。どんな困難な状況に追い込まれても普通、平静でいられるのは、多分、老子によるところが大きいと思います。あと、この文中の時々に出てくる英訳も好きで、時々引用して使わせてもらっています。

今回は私の人生の友!?である老子のご紹介でした(笑)

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