20年くらい前、海外で 普段私たちが日本で食べるような日本食 を食べるのはなかなか大変だった記憶があります。美味しい味噌汁に生姜焼き、唐揚げにお漬物、一汁一菜といった食事はとてもノスタルジックなものでしたし、日本の町中華やナポリタン、ハンバーグといった味わいを探すのは根を上げるほどに難しいのです。もちろん好みはあると思いますし、日本食を探す必要がない、と言われればごもっとも。
日本食が人気だ、という情報は耳にしてましたから、なぜこんなレベルなんだろうと思いよくよく調べてみると、そもそも、20年前といえばネット社会のちょっと前。10年ほど前になれば、ようやくSNSが普及したくらいのころですから無理もない。さらに、食材にも様々な課題がありました。たとえばお刺身で言えば、日本と海外では素材が異なるだけでなく、獲ってからの処置が異なります。当然、そうした食べ物をお店で出すときに必要な管理設備も異なります。つまりは、提供する人、考え方、インフラのすべてが異なるのです。そこに提供される日本食が、日本で食べた時の感動がない、と感じるのにも無理はありません。同時に、提供している側も、ここまで広範囲な課題に対応することは困難なのです。そしてそれは、世界のそこかしこの都市でより顕著な問題のように見えました。
嬉しいことに、現在の世界は大きく異なります。日本と同等かそれ以上の日本食が食べられるお店がたくさん生まれています。内情を聞いてみると、素材から水まで日本から輸入していたり、調達方法そのものを見直したり、自ら漁業関連企業を立ち上げたようなところまであり、味に対する本気度が伝わってきます。もちろん、日本人が経営しているお店も増えましたし、それ以上に本当に日本食を理解し愛している人たちが経営しているお店が増えた印象が強くあります。
だからこそ、日本食を海外で販売する我々の惣菜ひとつで”日本食がおいしくない”と思われるわけにはいきません。我々からすれば、味への自信はもちろんあります。ただ、提供する人、考え方、インフラのすべてが異なる環境の違いへの対応はどうしたらいいのか?
そこで実は我々、少し面白い発想にいきつきました。なんでもないことですが、それは「おにぎり」、ワンパッケージになった優れもの。全て外側をラップで巻いたりすれば、環境は維持できます。要は、食べるための環境そのものが1つの料理なんです。お店が「お米」を極める、ヤマダイ食品は「おにぎりのフィリング(具材)」を極める。これならば、「おにぎり」として、どの海外環境でも同クオリティのものが出せるはず。こうして私たちのフィーリングはいま、「おにぎり」に新しい展望を見出しつつあります。
こうしてお惣菜やさんから、新たにおにぎりフィリングの商品が発売されました。
アメリカのお客様では、1店舗で1日 1200個のおにぎりを売るところがあります。そう、おにぎりって今とっても売れているんです。お、じゃあおにぎりの種類が増えたらいいね。と思いを乗せて、私たちの海外向け商品開発は続いています。