
ヤマダイ食品株式会社の企業理念は『しあわせを成す』。企業理念とは、企業がなんのために存在するのか、それを定義するものです。今回はこの企業理念について、代表の樋口に背景や言葉に込められた想いについてお聞きしました!
―この企業理念にした背景を教えてください。
この理念を掲げたきっかけは、大学卒業してすぐに、某夢の国の本国本部のセミナーに参加したことでした。セミナーの第一講義のテーマが「企業理念」で、そこの理念が『Creating Happiness』だったんです。「そういえばうちの企業理念って聞いたことがないな」と思いました。すると講師の方が、参加していた経営者一人ひとりに「あなたの会社の企業理念は何ですか?」と質問を始めたんです。そして3番目、私の番になったとき、咄嗟にこう答えました。
「うちもCreating Happinessです。」
講師の方はびっくりして、「え!?いつから?」と聞かれたので、
「今からです。」と返答しました。
会場は大爆笑。でもそれから本当に「Creating Happiness」がうちの企業理念になったんです(笑)。最初は和訳して『幸せの創造』としていましたが、ある時「成す」という言葉と出会いました。「創造」という言葉には、どんな犠牲があってもプロセスなんて気にしないという印象があります。だから某夢の国はブラックなのかと納得しました。ところが「成す」という言葉には、プロセスの大切さが含まれています。私たちはプロセスも大切にしたい。どうやって幸せを生み出すのか、その過程も含めて価値があると考えています。だからこそ、「創造」ではなく「成す」という言葉を選び、『しあわせを成す』にしました。
―現在の企業理念は「しあわせ」とひらがなですが、何か意味があるんでしょうか。
しあわせって漢字で書くと“幸”と“福”の二種類あるんです。でも、この二つにはそれぞれ違う意味があるって知っていましたか?もともとヤマダイ食品の企業理念にもあった“幸”という字は、実は“ラッキー”を意味しているんです。漢字で書くと“僥倖”となり、“思いがけない幸運”や“偶然の幸運”という意味になります。つまり、自分の努力とは関係なく、たまたま運が良かった、というイメージですね。一方の“福”、町中華とかに行くと貼ってある、あの“福”の字です。これは実は“努力してつかみ取る幸せ”を表すそうです。これを知って、「うちは“福”のほうが合っているかも?」と思い、一時は“福わせ”と書いて「しあわせ」と読もうかと考えましたが、人生でラッキーも欲しくないですか? 僕は欲しいですね(笑)。努力でつかむ幸せも大事だけど、たまたま訪れる幸運もほしい。だったら、両方の意味を含められるように、あえて“しあわせ”とひらがなにしてみました。
―この企業理念を具体的にどのように経営や事業活動に反映していますか?
意思決定のとき、常にこの理念を最優先にしています。正直、利益だけを考えたほうが楽ですし、単純です。でも、それだと長くは続かないんですよね。短期的に大金を稼ぐことが目的なら、こんな理念にはしていません(笑)。企業の究極の目的って、“永続すること”だと思うんです。長く続くためには、お客様から「ヤマダイ食品、いいよね」と選び続けてもらわなければいけません。そのために、僕たちは“しあわせを成す”という企業理念を軸にして、意思決定を行っています。
つまり、倫理的に「あまり良くないことはやらないほうがいいな」とか、「みんながハッピーになる選択をしよう」という考え方をベースにしているんです。これ、正直やるのは大変ですが、ぶつぶつ言いながらも続けています(笑)。
―この理念に込められてるしあわせとは、どんなしあわせですか。
「幸せ」って、結局は自分で決めるものですよね。例えば、「生まれた時点で差があって不幸だ」とかよく言われますけど、実はその「スタート地点が違うから不幸だ」と思っている人たちが、逆に不幸だったりするんです。世の中ではよく、「みんな同じ勉強して、偏差値が高い方がいい大学行って、良い大学出た方がいいところに就職できる」みたいな価値観がありますが、僕はこの価値観は昭和臭がして古いと思っているんですよ。というのも、僕はそんなに豊かではない環境で幼少期を過ごした記憶があります。実家では、8畳の部屋に両親と4人兄弟の6人で布団3枚並べて寝ていて、小学6年生までは弟と一緒の布団で寝ていたので、修学旅行で初めて「1人1つの布団」に寝た時は、とても感動しました。周りから見たら「かわいそう」だと言われるかもしれませんが、当時の僕にとってはそれが当たり前で、生活が少しずつ良くなっていくその過程が、実は一番幸せだと思ったんです。
一人暮らしを始めた時も、最初は「ワンルームの部屋…これが自分の城だ!」って思いましたし、冷蔵庫も自分専用だから、アイスクリームに名前を書いておかなくても、食べられるリスクがない(笑)!これって最高の幸せですよね!結局、幸せって初めから良いよりも、「少しずつ良くなっていくこと」の方が実は幸せだったりするんです。だから、ヤマダイ食品も少しずつでも、全員の給料を上げ続けているんですよ(笑)。僕一人で始めた仕事ですが、少しずつできることが増えて、毎日が楽しいんです。(詳しくは本多静六氏の著書『自分を生かす人生』についての記事をご覧ください。)
だから、今も昔も両方楽しくて、周りの仲間が増えて、みんなで「少しずつ良くなっている」その状態が一番の幸せだと、僕は思います。
企業の目的は「永続すること」。そのために、お客様に選ばれ続ける存在でなければならない。ヤマダイ食品は「しあわせを成す」という理念を意思決定の軸にし、これからも社員一人ひとりとともに、食を通して長く愛される「価値」を創造し続ける企業でありたいと考えています。