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食べるの未来

気候変動の最前線 -博多おかわりフーズの挑戦-。

九州地方最大の文化、経済、政治の中心地である福岡。都市の中心を繁華街と見るのか、ビジネス街と見るのか、旧市街と見るのかによってさまざまですが、玄関口は誰もが認める博多駅です。そこから徒歩3分ほどのところにオフィスを構えるのが「博多おかわりフーズ」。食品原材料に関する商社機能をメインとしたヤマダイ食品のグループ企業です。

九州は独自の文化圏を形成しており、その歴史は日本の中でもかなり古くから栄えてきたものだと推察されます。日本で最も大陸に近い地域の一つであることから、最先端の文化を取り入れる玄関口として常に機能していたことが一つの要因といえるでしょう。さらには、本州がどちらかといえば木質の文化圏であるのに対し、九州では石を用いた文化がよく見られます。特に、石積みに長けた集団が多数存在しており、戦国〜江戸期には全国の城壁造りで引っ張りだこであったことも知られています。さて、こうした文化圏におけるビジネスにもまた、九州ならではの特徴があります。しかし今、九州はかつてないほど深刻な問題に直面しています。

 

変化する社会。

博多おかわりフーズのはじまりは、12年前。立ち上げ時の社員は1名のみ。当時、ヤマダイ食品は成長期にあり、四国、中国地方、九州地方でのクライアントが増加していました。中でも、九州には独自の商慣習と気質があり、特に義理人情に厚いことから、現地法人を立ち上げることによる信頼性向上が重要だと判断されたことがきっかけです。また、久留米にいらっしゃった豊富な生産者ネットワークを保持されていた方の存在も決め手でした。

設立当初も、その方の協力を得てほうれん草の産地にパイプを作っていきました。九州におけるほうれん草は、宮崎が特に名産地として知られています。もともと博多おかわりフーズは、OEM商品などの提案や製造窓口としての機能がメインでしたが新型コロナウイルスの影響などによりニーズが激変。現在では、九州の農産物を仕入れ、ヤマダイ食品本社の製造チームへ卸す役割を中心とし、10名ほどのスタッフが常駐しています。

しかしながら九州はいま、大きな気候変動の脅威にさらされています。特に夏は、頻繁に線状降水帯が発生し豪雨となります。結果、毎年河川が氾濫し頻繁に土地が浸水します。工業への影響も甚大ですが、農作物には壊滅的な被害となります。作付けしたにも関わらず、水害で収穫前に根こそぎ作物がダメになってしまうことも珍しくありません。いよいよ、離農の懸念も増大しています。鹿児島や熊本などのさつまいもの産地では、基腐病という根にカビが生える病気が広がり、福岡でも2020年に初確認されました。現在では、四国や関東地方にも拡大を見せており、さつまいも生産に甚大な影響がでています。こうした問題を解決するために、我々食品会社にもできることがあるはずです。

 

気候変動の最前線として。

実際、農作物の調達はこの10年で極めて不安定なものとなり、価格も乱高下することが当たり前となりました。九州だけで農作物の調達を行うことが難しくなっているのを肌で感じます。もちろん、皆が手をこまねいているわけではありません。国も、県も、市町村も皆対策に乗り出しています。しかし、相手は地球全体の変化。局所的な対応だけでは難しいのが実情です。

食品会社としてできることにはどんなことが考えられるでしょうか。たとえば、生産者を保護するために収量に限らずに契約農家とすることは、生産者に安心して農業を行っていだだけるかもしれません。全国にネットワークをもつ、我々のような食品グループであれば、離農せざるを得ない農家がもつ九州の生産ノウハウを、気候変動によって今後九州に似た環境となる土地へと転用することなども可能かもしれません。もちろん、すべては妄想といっていいレベルに過ぎませんが、できるアクションをどんどん実行していかなければ、気候変動の影響は我々の想像を超え早く、かつ劇的なものとして進行しています。九州の農産物は美味しいのです。それらをどのように守り、未来につなげていくのかも、博多おかわりフーズの重要なミッションだと考えています。

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