3rd DISH

農業と加工と営業と。

取材・文:Dishes編集部

素材をどうする?

どんなに調理する技術が優れていたとしても、素材がなければ料理にならず。どんなに営業能力が優れていたとしても、ものがなければ詐欺でしかない。結局のところ、ヤマダイ食品が扱う品物のすべての根源は大地であり農業ということになる。

しかしながら、人類史上最も古い産業でもある農業に流れている文化は少々独特である。たとえば、米で考えてみる。米農家さんは究極的には年に1度しか請求書を発行できない。米を苗から育てていく10ヶ月ほどの期間はすべて準備であり、生産期間である。しかもその間、天候の変化、災害リスク、人的リスクなどあらゆるリスクに晒され続けることとなる。水は人間が数百年かけて築き上げた灌漑設備が地域に備わっているが、気候変動によって新しいリスクにさらされるようになった。太陽は毎日登っては沈みゆくが、天体の動きをコントロールすることなぞできはしない。大地に関しては、代を重ねて土を作り上げてきてはいるが、それでもなお作物の生育は自然のなせる技である。つまるところ、年に1度の収穫まではずっと見守っていることしかできない。これが工業製品なのであれば、受注して、加工して、納品するというスケジュールは人間のコントロール化に大体はあるわけだが、やはり農業はそういかない。

 

農業にコミットする価値

中津もぎたてファクトリー webより抜粋

中津もぎたてファクトリー Webより抜粋

ヤマダイ食品は、農作物を仕入れ加工し販売するという領域から、農作物そのものの生産にもコミットしていくために「もぎたてファクトリー」をさまざまな地域に展開しつつある。ここには課題があった。たとえば、ヤマダイ食品のビジネスにおいては、野菜を食料品に加工して販売することに関する厳密なスケジュール設計が可能である。しかし、極めて特徴的な農作物となるとそうもいかない。すばらしくおいしい野菜を作れる農家さんがいて、その野菜を使って商品を作ってみたら素晴らしいものができたとする。さっそく営業に動いてみたら、すぐに評価され契約に至ったとする。さらに、翌年の生産スケジュールも組み、想定数量での契約となったとする。ここまでは万々歳である。

しかし翌年蓋をあけてみたら、農作物が大不作となってしまった場合は、生産スケジュールも契約もすべてが成立しなくなる。これは、食品会社としてビジネスリスクである。では、他の野菜でこれまで通りのことをして安定供給をさせることだけしかやらなくなってしまえば、「圧倒的においしい何かを作り出す」という可能性の芽をヤマダイ食品が自ら摘み取ってしまうことになる。だからこそ、農業生産にコミットすることが重要なのである。「おいしい」を供給していくことは、食品会社の重要な社会的役割であり、顧客価値の提供である。

たしかに、農業と食品加工は似て非なる業種である。しかし隣人であることに違いはない。理解し、連携しながら、新しい未来を切り拓いていくことは価値ある挑戦に違いない。

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