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外食の未来

伸びる、ベーカリー。

取材・文:Dishes編集部

ベーカリーというフロンティア

ベーカリーマーケットは、成長期にあります。2021年3月の日本経済新聞記事によれば、日本における2019年度のベーカリー市場は前年比1.0%増の約1兆7000億円です。特に要因として、消費税改定の影響で外食産業から消費者が流れたことが挙げられています。内訳は、家庭用・業務用のホールセール事業が全体の約7割を占め、店舗で販売するリテールセールは全体の約3割となっています。高級食パン専門店の増加もこうした動きに寄与していたということでしたが、この後、コロナの時代がやってきます。

矢野経済研究所が2021年10月にリリースしたデータでは、国内の冷凍パン生地、冷凍パン市場は、2019年まで順調に3.0%程度の成長を続けてきたのが、2020年度は10%以上の減少となりました。この年の数字は、前年比89.4%の約1.630億円です。しかし、2021年度にはふたたび3%以上の伸びを見せました。このまま進んでいけば、2025年度には1940億円以上になるといいます。

ベーカリー市場全体にも似た傾向が当てはまります。時事通信Web版に掲載された、2021年11月にREPORTOCEANが発行した新しいレポートでは、世界のパン市場は2021年から2027年の間、年平均4%以上での健全な成長が見込まれているのです。パンの製造機械の数字などすべてが同様の兆候となっています。ベーカリーマーケットが成長市場である証左だと言えます。

 

ベーカリーに野菜を。

「野菜」と「冷凍」という、ヤマダイ食品が強みとする2つの領域は、上記に記したベーカリー市場動向にインパクトを残す可能性があります。日本と海外では、ベーカリーで展開される商品に大きな差異がありますが、どちらにおいても野菜を使った品物は豊富に存在します。たとえば、ほうれん草をペースト状にしパンに練り込んだ品物や、お惣菜のように下ごしらえした野菜をパンの上に乗せてチーズをかけて焼き上げるといった品物は、すでに一般的なものです。タンパク源としての代替肉に大豆の存在感が高まっている点もアドバンテージとなり得ます。すでにヤマダイ食品では、大豆タンパクの代替肉転換事業への投資を実施しており、今後市場供給量を増やしていく予定だからです。

甘味としての野菜素材の活用にも活路があります。芋類などの甘味を徹底して引き出すような調理は和食においては重要な調理技術です。たとえば、ベーカリーへの野菜提供時に、特に甘味の強い芋類を使いやすい状態に加工調理して提供することは十二分に可能です。

冷凍パンのマーケット拡大も追い風となるでしょう。アメリカなどでは今後、冷凍パン市場は6%近い大きな成長が見込まれています。最近では、コンビニの冷凍コーナーにマカロンやカッサータといったスイーツも登場し人気です。実際世界では、冷凍パンのバリエーションは増加しており、スイーツも含めれば巨大なマーケットです。これからも、こうした需要の成長が続くと予測されており、日本発の新しい商品展開にも大きな可能性と余地が存在しています。

 

日本はユニーク。

日本のパンは、世界の中でも特殊な位置付けとされます。たとえば食パン。もとはイギリスの山型ブレッドがベースとされますが、日本のように生クリームを入れたりして徹底的に柔らかくするタイプの食パンは日本以外ではほとんど見られません。あんぱんをはじめとする甘い菓子パンも同様です。さらには、焼きそばやカレーといったご飯のおかずを詰めたパンがあり、主食であるご飯をパンに置き換えた発想に違和感がありません。海外においては、もとよりバゲットやブレッドと一緒に食されるチーズやハム、ソーセージが上に乗ったり挟まれているのが一般的であり、別の主食のおかずをパン領域に持ち込むことはほとんどありません。こうしてみると、ある意味において「和食=日本発想」としてのパン食も存在する、といってもいいのかもしれません。

調理済みの惣菜や、野菜や根菜類をパン食に合わせて開発し、それをベーカリーに素材として提供していく取り組みはヤマダイ食品のリソースとの相性もよく、高いレベルでの品質実現が可能であるという観点において魅力があります。現代において、栄養素だけでなく多様な味わいを備えた穀物を含む野菜にはさまざまな分野からより高い注目が集まっています。野菜が持っている甘味、辛味、酸味、旨味など、あらゆるポテンシャルを引き出しながら、食品へと加工する技術の蓄積と醸成をベースにした、ベーカリーに対するヤマダイ食品の新しいご提案を、ぜひ楽しみにしていてください。

 

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